漫画『ここは今から倫理です。』を読んで思った事と、命について書き留めておきます。
※今回はちょっと重い内容です。
(集英社公式サイトより引用)
漫画のあらすじ
この漫画のざっくりとしたあらすじは、
クールで若くてイケメンな倫理の高柳先生が、生徒の悩みに向き合い、倫理を教え、お互いの思考を深めていく話です。
だいたい1話完結のオムニバス形式になっています。
倫理とは
個人的に私は倫理が好きです。
授業は面白かったし、暗記量が少ないのもあって、大学入試では選択科目として選びました。
ソクラテスの無知の知とかマズローの欲求階層説とかは、今でも思考する時によく使うし、
博愛主義なので、功利主義の話を聞いた時は凄くダメージを受けた覚えがあります。
また、日頃から気づけば思考をしていて、周囲から哲学的だよね、と言われたりするので、
「そうか、私は哲学が好きなのか」と思い、この漫画のタイトルに純粋に惹かれて読んでみました。
そこでまず感じたのは、「哲学と倫理って何が違うの?」ということ。
ネットで調べたことによると、倫理は哲学の一つの分野だそうです。
哲学はあらゆることの根本を、なぜ?と突き詰めるのに対し、
倫理は、その中でも人間の生き方を問うもの なのだとか。
感想※ネタバレ注意
この漫画で私が好きなのは、高柳先生が素敵な言葉を教えてくれる所です。
「愛こそ貧しい知識から豊かな知識への架け橋である」(マックス・シェーラー)
「誰もが自分の視野の限界を世界の視野の限界だと思っている」(ショーペンハウアー)
「不安は自由のめまいである」(キルケゴール)
など、なるほどなぁと思い、メモをしながら読んでいます。
現在、4巻まで出ているのですが、私は2話目の、女子生徒が屋上から飛び降りようとした所を高柳先生が救う話が心に残っています。
ちなみに、この漫画のレビューを色々読んだのですが、やはりこの話を扱っている人が多かった・・・!
高柳先生って凄いなぁ、どうしたらこんな人になれるんだろうって思いながら読んでいるのですが、高柳先生の、飛び降りる生徒へかける言葉は、私が人生で初めて出会ったものでした。
そして、私も同じような状況に出くわしたら、その言葉を使いたいな、と思いました。
以前は、ドラマや映画で、飛び降りようとするシーンが出てくる度に、「私だったらどんな言葉をかけられるのだろう?」と考え、しかしながら考えても、答えが分からずにいました。
その人のことをよく知らないと、良かれと思って言った言葉が逆効果になることもあるし、
「生きていれば良い事あるよ」みたいな、ありきたりな事しか言えなさそう…
誰かの幸せは誰かの地雷
(ドラマ『モトカレマニア』より)
だから、なんて言葉をかけたらいいのか、私の言葉が逆効果にならないか、そう思って正解が分からずにいました。
力尽くで阻止するパターンもあるけど、向こうの方が力が強かったらそれも出来ないし、
人の心を動かすのって凄く難しいから、
時間が無い中でその人の心を救うなんて、賭けでしかない。
と、思っていました。
実はそんな中、ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』を見て、初めて、これが正解パターンか?と思うものに出会いました。
詳しくは記事にまとめています↓
このドラマも先生が生徒に声をかけるのですが、この先生はちょっとファンキーなので、逆に飛び降りをそそのかします∑(゚Д゚)
気が抜けた生徒は飛び降りを止めるのですが、
なんならその先生は、飛び降りても大丈夫なように、下に布を張り、勇気を出して飛び降りろと言います。
最終的に生徒は、無傷での飛び降りに成功。
そして飛び降りた事が、自信を持つ事に繋がっていました。
私は、この最初の時点で、先生が生徒を笑わせて、緊迫感を解く所がミソなんじゃないかなと思います。笑わせられたら勝ちなんじゃないか。
でも、笑わせるって難しいですよね、
ふざけた事をしたら、逆効果な場合もあるし…
そこで、高柳式の出番です!
高柳先生は、この生徒に、
「死にたい理由は、どんな理由だとしても、命に換わる程、重い絶望になる」
と、生徒の死にたい理由に理解を示し、共感するんです。
そして、一度共感をしてから、生徒に語りかけて、その内容に思わず笑わってしまった生徒は、飛び降りをやめます。
やっぱり笑うって凄いパワーなんだな…
命はあっけない
私は、この話を読んで、自分で命を絶つ事の根本って、「重い絶望」だよなって、凄く納得しました。
自分で自らの命を絶つ事って、人生で考えた事がある人と無い人がいると思いますが、
実際に行動に移す人もいますよね。
私が今までで1番ショッキングだったのは、あるアイドルが、ある日突然いなくなった事でした。
結構応援していて、ルックスが良い上に、歌もダンスも上手く、その才能を羨ましいと思っていて、この人は売れる、大丈夫。と思っていたら、突然そのニュースを聞きました。
理由に心当たりが無さすぎて、
「なんで?なんで?」という感じでした。
調べても、ちゃんとした理由は分からなかったけれど、どうやら華やかな世界の裏で、昔からずっと悩みを抱えていたそうです。
その時私は、
「なんで周りの人達は気づけなかったのだろう?」
と思ったのですが、
でも、自分が命を絶つ事について考えた時の事を思い出すと、
救えるかどうかは、出会いに左右されるのだなと思います。
私が辛かった時の心理を表現すると、
人知れず、海に溺れた感覚です。
水の天井は高く、
泳ぐ体力は無く、
沈んでいく自分に対して、
もはや気力も無い。
呼吸が苦しくて、早く眠ってしまいたい。
そんな感じです。
その時は自分1人で、周りには水しか見えません。
で、そんな時に、上から手が伸びてきて、ぐっと引っ張ってくれる人が、いるか、いないか。
これがすなわち、救ってくれる人に出会えたかどうかです。
誰にも迷惑をかけたくないから、誰も分かってもらえると思わないから、だから周りには相談できなくて、周りも気付くことができない。
でも、高柳先生のように、どんな理由でも理解してくれて、共感してくれたら、この人に相談してみようって気になるんじゃないかな。
この理解と共感が、「自分は一人じゃないんだ、そこに手があるんだ、掴んでみようかな」って気づかせるために必要な事で、
ぐっと引き揚げる力の源が、気の抜けるような言葉と笑いなのかな。
「なんで自分は、こんなことに悩んでたんだろう、意外とそんな大きな事じゃないな」って我に返って、絶望がどうでも良いことに変わった時に、気が抜けるんですよね。
この出会いって、実際に周りにいる人じゃなくても、歌とか言葉とか映像とか、その形はなんでも良くて、それに出会えたかがその人の人生に重要で、それに出会えるように、沢山の人が色んな方法で社会にまいてくれているのだと思うんです。
でも、それでも、救えない命があるのは、生きている事が当たり前な平和な世界にいると、その当たり前が当たり前じゃない事に気づきにくいからかも知れません。
命は、自分が思っているより、あっけないのに。
だからやっぱり、倫理を教えることは大切だし、暗記だけじゃなくて思考する勉強も重要だと思います。
まとめ
という事で、少し重い内容になってしまいましたが、結論、私はこの漫画が好きです。
そして、この漫画のおかげで、私は倫理が好きで、哲学が好きだと改めて感じました。
ちなみに私は、自分がいなくなった後の世界を想像して、悲しんでくれる人がいる事に気づき、踏み止まれました。その人達のためにも頑張って生きようって思いました。
なので、家族や友達は大切。そして想像力も大切。
せっかくの一度きりの人生だから、完璧じゃなくても、最期までやりきる事が、命を貰った事への恩返しだと思います。
生きていると、浮き沈みもあるし、自分では上手くコントロール出来ない時もあるけど、
そんな時私は、『今私は、宇宙の波に乗れていないだけだ』と思うようにしています。
(ちょっとスピリチュアルな言い回しですが、それくらい大きな、人間では知り得ない何かに起因してる可能性があるから、自分のせいでも誰のせいでも無いよ、自分や誰かを責めなくて良いんだよ、ということです。)
そして、この波は、気づいたらまたふと乗れているものなので、焦らなくて大丈夫。
何よりも生きている事が大切です。